好きになっちゃダメなのに。
熱があるわけじゃないよね?と、思わず速水くんに掴まれている手とは逆の手を、彼の方に伸ばした。
「っ!?」
速水くんはなんだか驚いたような顔をしていたけど、私は構わず手を近づける。
そして、速水くんの額に触れた手のひらは彼の温かさを感じたけれど、熱があるほどの熱さではなかった。
「んー、そうだよね、こんなにいきなり熱が出るとか、そんなわけないよね」
さっきまで元気だったしね。
うん、具合が悪いのかも、なんて私の思いすごしだったみたい。
ホッとして息を吐いた私は、手を引っ込めようとしたけれど。
「!?」
速水くんの額から離した手が、もとの位置に戻る前に、動きを止めた。
……パシッ、という軽やかな音と共に、彼の手が私の手首を掴んでいたから。
「……え」
もともと片手は掴まれていたから、今はもう両手を捕らわれている状態で、完全に腕の動きを封じられてしまった。