好きになっちゃダメなのに。
「さっきの、聞いてた?」
「う、ううん?さっきのって、何?」
自分がどうして嘘をついているのかわからないまま、私は反射的にふるふると首を振っていた。
……だけど。
「見え見えの嘘つくなよ。……聞いてたんだろ?」
はぁ、というため息とともに降ってきた言葉に、私は何も言い返せない。
そう思うなら、はじめから訊かなきゃいいのに。
「言いふらしたかったら、言ってもいいよ。女子ってこういう話題好きだもんな」
「え!?言わないよ!!言える訳ないじゃん!」
あきらめたような口調で言った速水くんの言葉に、私は思わず俯いていた顔を上げ、言い返していた。
まさか、そこまで信用されていないとは思っていなかった。
いつもと同じように淡々とした態度の速水くんだけど、傷付いていないわけないもん。
人の失恋を、人の傷を、邪気なく笑えるほど、私は冷たい人間じゃないって自分では思っているんだけど。
速水くんの中では、私はそういう人間だって思われているのかな。
「ふーん。……なんで?」
なんでこんな面白いネタを隠しとくの?
速水くんの目はそう言っていて、私はもう意味が分からなかった。