好きになっちゃダメなのに。
「……速水くんにお礼を言われる日が来るなんて思わなかったよ」
「何だよそれ。失礼」
さて、今日も始めるよ。
そう言って、切り替えてファイルを開く速水くんが書類のほうを見てくれて、よかった。
今度は私の方が、泣きそうな顔になっているに違いないから。
速水くんの「ありがとう」が、思った以上に嬉しかったみたい。
泣きそうな顔で笑った速水くんの表情が、頭から離れてくれない。
優しく笑ってくれただけで、信じられないくらいドキドキして。
ありがとうの一言だけで、泣きたいくらいに、嬉しい。
……ああ、もう。
私、この人のこと、本当に苦手だったのになぁ。
一緒にいたって絶対に友達以上の感情なんて、ううん、友達に感じる好意すら、感じられるわけないって思っていたのに。