好きになっちゃダメなのに。
「……何見てるの?」
作業の手を止めて私を見る速水くんに、私は「なんでもないよ」と笑った。
……ついこの前までは、まだ戻れるって、思ってた。
ドキドキなんて気のせいだって、思ってた。
でも、そんなことを考える時点で、きっと私はこの人に堕ちてしまっていたんだろう。
気付いちゃったら、認めちゃったら、もう引き返せないよね。
速水くんには好きな人がいるって、分かってるのに。
それが私には敵うはずのない人だっていうことも分かってるのに。
つらい恋になるって、分かってるのに。
それでも、もう認めるしかないみたい。
────私。
速水くんのことが、好きなんだ。