好きになっちゃダメなのに。

「……さっきの続きだけど。本当に晴山さんは失敗してもいいよ」

「やっぱり冗談じゃなくて本気だったんじゃん」

「そうじゃなくて」


ステージからは、志賀先輩の芯のある強い声が聞こえてくる。

まともに聞いたらそれこそ緊張で死にそうだったから、話しかけてくれて助かったかも。


「たとえ失敗しても、晴山さんがちゃんと頑張ってくれることは分かってるから。だから、大丈夫」


失敗なんか恐れる必要ないよ。


そう、言って。

ふわりと、この前見せてくれたのと同じ優しい笑顔を見せてくれた速水くんに。

励ますような言葉をくれた速水くんに、ドキッと胸が鳴った。

まさかそんな優しい言葉をかけてもらえるなんて思ってもみなかったから、なんだか胸がぎゅうっと苦しくなる。

さっきとは違う意味で心臓が脈打つ速度を増す。


「……ありがと」

思わず呟いた言葉は、ステージから聞こえてくる声にかき消されたんじゃないかと思うほど微かな声だったけど、なんとか速水くんには届いたらしく、彼はまた、優しい笑みを深めてくれた。


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