好きになっちゃダメなのに。
────須谷くんのスピーチはステージ裏の私たちにもしっかり聞こえてきて、それは他の立候補者と同じく、とても立派なものだった。
そう思ったのは私だけではないことは、鳴りやまない拍手が証明している。
「次、速水くんお願いします」
係の人のそんな声が聞こえた。
ステージに上がるように促されて、私と速水くんは椅子から腰を上げる。
……いよいよ、私たちの番。
心臓の鼓動がドキドキとやけに大きく聞こえて、せっかく速水くんが優しい言葉をくれたのに緊張してしまう自分に少しがっかり。
……でも、まぁ、仕方ないよね。
こんなふうに人前に立つことなんてない私が緊張しない方がおかしいもん。
緊張するのは普通だ、普通。
自分にそう言い聞かせる。