好きになっちゃダメなのに。
……気にする必要なんてない。
どんなに緊張したって、きっと大丈夫。
だって隣には、速水くんがいてくれるんだから。
よし、と心の中で気合いを入れた。
私の一歩前を歩きだそうとしていた速水くんについていこうとしたら、彼はふいに立ち止まり、私の方を振り返る。
どうかしたのかな、と首を傾げた私の前に差し出されたのは──、速水くんのしっかりと握られた拳。
突然だったし、普段の速水くんからは想像できない行動だったし。
私は本気で驚きながらも、自分の拳を速水くんの拳にコツンとあてた。
すると、そんな私に向かって、速水くんは小さく微笑んでくれる。
「っ」
その微笑みが、やっぱりすごく優しくて、温かくて。
速水くんに本当の仲間だと認めてもらえたような気がして、胸がいっぱいになってしまった。
「……速水くん」
呼んだら、私をまっすぐに見てくれる。
どうしてか、それだけのことがすごく嬉しい。
私は、速水くんを、そして自分を勇気づけるように、精一杯微笑んだ。