好きになっちゃダメなのに。
速水くんが優秀な生徒だということは、今更こんな立派なスピーチをしなくても、みんな知っているんじゃないかな。
ただでさえ、どこか大人びている速水くんは他の生徒に一目置かれているというか、どうしても引け目を感じさせてしまう雰囲気があるというか。
それこそ生徒会のメンバーのようにデキる人でなければ、いつまでもクラスメイトどまりで友達にさえできないような気がしてしまう存在。
……速水くんは客観的に見て、とても綺麗な顔をしている。
それに、学校を代表する秀才だっていうことも、周知の事実。
1年間生徒会で活動してきた実績だってある。
羽依ちゃんが言うように、速水くんは皆にとって、どこか遠い人、だったんだと思う。
もう充分だ、って思った。
速水くんの出来過ぎる立派な部分は、伝える必要なんてないくらい伝わっている。
今更伝えなくたって、速水くんが立派な人だっていうことは、前提として見てくれる。
……きっと、中間投票のときだって、速水くんが、遠い人に見えてしまうくらいできる人だということはみんな分かっていて、それでも須谷くんに票を投じた人の方が多かった。