好きになっちゃダメなのに。

……そ、そうだよね。

寝ぼけてたんだよね。

私のこと、抱き枕か何かと勘違いしちゃったんだよね、きっと!


「……おはよ、速水くん。こんなところで寝てたら風邪ひくよ」

「え、いや……、あんたなんでそんなに普通なの?俺、……抱きしめちゃってたよね?」


必死に平静を装った私の態度に、速水くんは驚いたようだった。


「えと、だって、寝ぼけてたんでしょ?……私のこと抱き枕か何かと間違えちゃったんだよね?」


「いや、間違えた、っていうか……、ごめん。……完全に夢の中だと、思ってて」


夢の中……?

え。

それってもしかして、夢の中では、寝ぼけてたとかそういうのナシに、速水くんは本気で私のこと抱きしめ……、


「……っ」


って、ヘンな解釈しちゃダメだ!

間違ってたら恥ずかしすぎるもん!


そう自分の妄想を必死に止めようとするけど、俯いた速水くんの耳が真っ赤で、そしてそれが夕日のせいだけじゃないような気がして、戸惑う。



「ヤバい。どこから現実?どこからやらかしちゃってた?」

はああーー、と大きく息を吐いた速水くん。


「あ、あの」


「ホントにごめん」


いつもの速水くんからは想像できないくらいへこんでいるから、私はなんだかおかしくなってしまって。

< 253 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop