好きになっちゃダメなのに。
……そ、そうだよね。
寝ぼけてたんだよね。
私のこと、抱き枕か何かと勘違いしちゃったんだよね、きっと!
「……おはよ、速水くん。こんなところで寝てたら風邪ひくよ」
「え、いや……、あんたなんでそんなに普通なの?俺、……抱きしめちゃってたよね?」
必死に平静を装った私の態度に、速水くんは驚いたようだった。
「えと、だって、寝ぼけてたんでしょ?……私のこと抱き枕か何かと間違えちゃったんだよね?」
「いや、間違えた、っていうか……、ごめん。……完全に夢の中だと、思ってて」
夢の中……?
え。
それってもしかして、夢の中では、寝ぼけてたとかそういうのナシに、速水くんは本気で私のこと抱きしめ……、
「……っ」
って、ヘンな解釈しちゃダメだ!
間違ってたら恥ずかしすぎるもん!
そう自分の妄想を必死に止めようとするけど、俯いた速水くんの耳が真っ赤で、そしてそれが夕日のせいだけじゃないような気がして、戸惑う。
「ヤバい。どこから現実?どこからやらかしちゃってた?」
はああーー、と大きく息を吐いた速水くん。
「あ、あの」
「ホントにごめん」
いつもの速水くんからは想像できないくらいへこんでいるから、私はなんだかおかしくなってしまって。