好きになっちゃダメなのに。
「は、速水くん。もしかして、まだ寝ぼけてるの?」
「寝ぼけてるように見える?」
見えないけど!
見えないからこそ、混乱する。
だって今度は、抱き枕と間違えたわけじゃなく、私を抱きしめてるって分かる。
バクバクと心臓が鳴りすぎて、私は息の仕方すらわからなくなりそうだった。
「……あんたは絶対俺のこと嫌いなままだと思ってたから、言うつもりなかったのに」
速水くんは大きなため息をついて、諦めたようにそう言う。
「でも、ムリ。なんかもう我慢できない」
「あ、の」
「……好きだ」
間近から聞こえた言葉に、思考が全てストップした。
抱きしめてくる腕をほどこうとほんの少し抗っていた手も、ぴたりと動きを止める。
……え?
今、速水くんなんて言った?
すき、って、言った……?