好きになっちゃダメなのに。

え、そんなことあるわけないよね。

だって速水くんが好きなのは、私じゃなくて────。


ようやく思考が動き出してきたけれど、やっぱり混乱しているのは変わらなくて、今の状況がまったく理解できない。


「……晴山さんじゃ一回言ったところで分かってもらえないと思うから、もう一度言うけど」


少し緊張したような声が一度途切れて、間近で彼が呼吸するのが分かる。



「俺は、あんたが好きなんだよ」



ギュッ、と体に回る腕の力が増す。

男の子にこんなふうに触れられるなんて初めてで、まして好きな男の子に抱きしめられるなんて、自分にはまだまだ遠い世界のことのように思っていたのに。

突然夢が現実になったような感覚に、どうしたらいいのか分からない。


それでも、好きな人に触れてもらえるのがこんなに嬉しくて、幸せなことなんだ、って、心がジンと熱くなった。



「ずっと陽とのこと、応援してくれてたのにごめん。

……でも俺、いつの間にか、あんたの方が大事になってた」


「っ」


耳元に響く熱を帯びた声は、今までの冷ややかな彼からは想像できないくらいのはっきりと熱を持った感情が滲んでいて、私の心を震わせる。

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