好きになっちゃダメなのに。

だとすると、なんだろう、中身の問題?

でも、私、できるだけ速水くんとはかかわらないようにしてきたし、速水くんが実際どういう人柄なのかなんてよく知らないよ。

たまに話すときだって、いつも意見が合わずに衝突しちゃって、会話が続かないし……!

彼について知っていることと言えば、頭がいいことと、顔がいいことと、言葉に容赦がないことと。

……あとは、さっきふられてた、ってことくらい。

改めて考えると、私って本当に速水くんのこと、知らないんだね。


「……わかんない、よ」


正直にそう口にすると、速水くんは不満そうに眉根を寄せた。


「そう。晴山さんから見て、俺って女々しいヤツなんだ」

はい!?

どうしてそうなるの!?


「違うよ!私、速水くんのこと全然知らないから、本当にわからないんだもん!だいたい、どうして急にそんなこと訊くの?」

勢いのままそう訊くと、速水くんは少し気まずそうな顔をして黙ってしまったけれど、しばしの沈黙を挟んだ後、ゆっくり口を開いた。


「陽(ひなた)が、ずっと言ってたんだよ。……男らしいやつが好きだって」

はぁ、というため息まじりの速水くんの答え。

それを聞いて、私は無意識のうちに目を大きく見開いていた。

「だから、振られたってことは、あいつにとって俺は男らしくなかったのかと思って」


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