好きになっちゃダメなのに。

今日はなんてすごい日なんだろう。


選挙にも当選できて。

叶うはずないと思っていた恋が叶おうとしてる。


────こんな日に笑わないで、いつ笑うの。

今は泣く必要なんてない。



「生徒会長、当選おめでとう」



まっすぐに速水くんの瞳を見つめ返して、はっきり告げた。


少し驚いたような顔をしたような速水くんに、私はにっこり笑う。


「あとね」


まさか、こんな幸せな気持ちで、この言葉を言える日が来るなんて想像もしていなかった。



「私も、速水くんのことが好きです」


口にした瞬間、身体が再び温もりに包まれて。


「……速水くん、ハグ好きなんだね」


直に感じる温もりに、さっきまでは一方的に与えてもらうだけだったその抱擁に。

今度は私も手を伸ばして、キュッと彼の背中に手を回す。

速水くんは「からかうなよ」と少し拗ねたように言った。

< 261 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop