好きになっちゃダメなのに。
「あ、そういう、こと……」
って、ちょっと待って。
速水くん、サラッと今、陽って言った?
それってもしかしなくても、速水くんが告白した相手?
ああ、そういえば。
速水くんの告白を断っていた、凛とした芯の通った声。
聞いたことがあるかもしれない。
「……速水くんが好きな人って、志賀先輩だったんだ……」
思わずそうこぼした私に、速水くんは驚いたような表情を浮かべた。
「……告白、聞いてたんじゃないの?」
「聞こえたけど、誰かまではわからなかったよ。私、先輩と話したこととかないし……」
────志賀陽(しが ひなた)先輩。
生徒会で会計を担当している。
直接かかわったことはないけれど、全校集会や学校行事のときに声くらいは聞いたことがあるし、遠目で見たことくらいはある。
でも、普段かかわらない人だから、言われるまで気付かなかった。
……そっか。
そういえば、速水くんって生徒会の書記だもんね。
そこで仲良くなったのかな。