好きになっちゃダメなのに。
渡された記章を思わず握り締めると、それを了承と受け取ったらしい速水くんは、安心したように笑う。
そして。
「じゃあ次、晴山さんの番だよ」
そう言うと、私が記章を持つのとは逆の手に可愛らしい花束を握らせて、背中を押してくる。
ハッとして周りを見れば、いつの間にか私たちに集まっていた視線。
「え……っ」
「ホラ、晴山さん。さっき素敵、って言ってたじゃん。自分もできるよ。よかったね」
ニコッと笑った速水くんに、私はなんだか恨めしい気持ちになったけど、とてもじゃないけど反抗できる雰囲気じゃない。
私は小さく息を吐いて、覚悟を決めた。
前に進む、────新しい場所へ飛び込む、覚悟。
「1年間、おつかれさまでした」
今の副会長のところへと歩みを進め、速水くんから託された花束を渡す。
すると、先輩は「サンキュ」と笑顔を見せてくれた。
「慣れないことも多くて大変だろうけど、頑張れよ」
そんな優しく力強い言葉に嬉しくなりながら、大きく頷く。