好きになっちゃダメなのに。

「ヒナ~、それは言わない約束だよ。ここにいないんだから、そういうことでしょ」

たしなめるような口調で言ったのは、3年生の梶原先輩。



「……そうなの?」


梶原先輩の言葉を確かめるように速水くんに向けてそういった志賀先輩に、速水くんは何も言わなかった。

ただ、小さく息を吐いただけ。


その雰囲気に他のメンバーは何かを察したのか、「まぁ、そういうこともあるって!」と明るくそれぞれが口にして、無理矢理その話を打ち切るような流れになった。


志賀先輩だけはどこか不満気な顔をしていたけど、それ以上は何も言わず、先輩も小さくため息をついて、やがて他のメンバーとのおしゃべりに戻っていく。


一体何の話だったのか、私にはさっぱりわからなくて、だけどそれを尋ねられる雰囲気でもなかったから、黙って事のなりゆきを見守ることしかできなかった。

< 273 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop