好きになっちゃダメなのに。

志賀先輩は、私達よりひとつ年上の3年生。

頭もよくて、所属している剣道部でもすごくいい成績を残していて、しかもすごく美人、らしい。

接点がなさすぎてちゃんと顔を見たことがないから、私はよく知らないんだけど。

すごく綺麗でカッコいい人、っていうイメージだ。


「なんだよ……。じゃあ俺、わざわざ自分でバラしたってこと?」


はあ、と大きなため息をついて、速水くんはそう言った。

そうなるね、なんて言ったら睨まれそうだったから余計なことは言うまいと、私は黙ったままその落胆を眺める。


「まぁ、いいや。別に隠してるわけじゃないし。……で、さっきの答えは?まだ聞いてないけど」


ええっ、まだその話題続いてたの?

ていうか、私に訊いたって仕方ないような気がするんだけどなぁ。

もっと恋愛経験豊富な人にきいた方が参考になるんじゃないかな。

私、自慢じゃないけど、恋愛経験なんて全然ないもん。


「……」

諦めてくれないかなぁ、と思ってみるけど、まっすぐに私を見据えたままの目は真剣そのもので、どうやら私はなにか言わないといけないらしい。

私の方が諦めて、ふう、と息を吐いた。


速水くんのことなんて、わかんないよ。

……わかんない、けど。

< 28 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop