好きになっちゃダメなのに。
志賀先輩は、私達よりひとつ年上の3年生。
頭もよくて、所属している剣道部でもすごくいい成績を残していて、しかもすごく美人、らしい。
接点がなさすぎてちゃんと顔を見たことがないから、私はよく知らないんだけど。
すごく綺麗でカッコいい人、っていうイメージだ。
「なんだよ……。じゃあ俺、わざわざ自分でバラしたってこと?」
はあ、と大きなため息をついて、速水くんはそう言った。
そうなるね、なんて言ったら睨まれそうだったから余計なことは言うまいと、私は黙ったままその落胆を眺める。
「まぁ、いいや。別に隠してるわけじゃないし。……で、さっきの答えは?まだ聞いてないけど」
ええっ、まだその話題続いてたの?
ていうか、私に訊いたって仕方ないような気がするんだけどなぁ。
もっと恋愛経験豊富な人にきいた方が参考になるんじゃないかな。
私、自慢じゃないけど、恋愛経験なんて全然ないもん。
「……」
諦めてくれないかなぁ、と思ってみるけど、まっすぐに私を見据えたままの目は真剣そのもので、どうやら私はなにか言わないといけないらしい。
私の方が諦めて、ふう、と息を吐いた。
速水くんのことなんて、わかんないよ。
……わかんない、けど。