好きになっちゃダメなのに。
私?
速水くんの言葉の意味が分からなくて、私はジッと彼を見上げる。
すると、私の視線を感じてか、速水くんは前を見てた視線を私の方にちらりと向けて、ふっと力を抜くように笑った。
「言ったじゃん。須谷のことを避けていたのは、これ以上とられるのが怖かったから。……でもあんたは絶対に大丈夫だと思えた。
あんたが隣にいてくれたら、あいつともまっすぐ向き合えると思ったんだ。
選挙のとき……、絶対味方だって言ってくれたの、実は結構嬉しかった」
嬉しかった、そう言った速水くんの声は少し控えめで、照れてるんだってわかった。
暗いからハッキリとは分からないけど、きっと彼の耳は赤くなってるんだろうな、って簡単に想像できてしまって。
『────私は絶対に速水くんのことを裏切らないから。
だから、速水くんも私のこと……、信じて欲しい』
速水くんの言葉と同時に脳裏によみがえった、いつかの自分のセリフ。
あのときは、信じて欲しくて必死だった。
私が誰より速水くんの味方でいたくて、誰より近くで応援していたいんだってこと。
……こんなふうに速水くんの心にちゃんと届いていたのだと思うと、すごくうれしい。