好きになっちゃダメなのに。

「す、須谷くんっ!!」

ハッとして、追いかける。

自分でも思ったより大きな声が出て、須谷くんも驚いたように振り返った。


そして一瞬目が合った後、彼は不機嫌そうな顔になって私に背中を向けると、校舎に向かって歩きだしてしまった。


「待って!」

慌てて追いかけたけど、今度は完全に私のことなんか見えてないみたいに無視してくる。

須谷くん、と何度呼びかけても立ち止まってはくれず、やがて校舎に入ってしまった。


それでも諦めずに足早に教室を目指す須谷くんに追いすがっていたら、やがて彼は少しずつ歩調を緩めてくれて。

そして立ち止まると、ひとつ、大袈裟なため息を吐き出したあと、私を見てきた。


「……なに?もう遅刻ギリギリだよ。晴山さんもはやく教室に戻れば?」


面倒くさそうな表情で、不機嫌さを隠そうともしない口調で言った須谷くん。


あんなに人当たりのいい須谷くんでも、こんなふうに誰かに当たったりするんだ。


「少しでいいから、話をさせて」

「悪いけど、晴山さんと今は話したくない」


吐き捨てるように言った須谷くん。

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