好きになっちゃダメなのに。

だけど、引き継ぎは今日の昼前の集会で行われる。


「お願いします。副会長、……引き受けてあげてください」


話せるのは今しかない。

だから私は、須谷くんの言葉を聞かなかったふりをしてそう言うと、頭を下げた。


「速水くんの力になってあげてください」


速水くんにとって、生徒会は特別な場所。

志賀先輩がいなくなっても、それはきっと変わらない。

そんな場所に須谷くんを呼ぶと決めたこと、簡単な決意じゃなかったと思うんだ。


「速水くんは、須谷くんと一緒に頑張りたいと思ってる。新しい生徒会には、あなたが必要だと思ってるんだよ。

だから……、お願いします」




頭を下げたままだから、須谷くんが一体どんな表情をして聞いてくれていたのかは分からない。

それでも私を置き去りにはしていかなかったから、きっと聞いてくれたんだと信じることにする。


「……」


しばらく須谷くんからは何の反応もなかった。

だけどやがて、大きなため息と共に、「顔、上げてよ」という声が聞こえた。

その声にしたがって顔を上げたけど、須谷くんは厳しい表情のままだった。

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