好きになっちゃダメなのに。
「晴山さんに何を言われても、引き受ける気はない。大体、速水が俺と一緒に、なんて。俺のことが必要だなんて思ってるわけないだろ」
「そんなことない。須谷くんと同じように、速水くんだって須谷くんのことを羨ましく思ったりするんだよ。須谷くんの力を認めているからこそ、きっと今まで向き合えなかったんだよ」
……私なりに、精一杯説得したつもりだった。
だけど、須谷くんは厳しい表情をしたまま、「もう行く」と一言残し、歩きだしてしまった。
「……っ!
須谷くん、賭けに負けたんだよ!須谷くんにできることなら、何でもやってくれるって言ったよね!?」
苦し紛れにそんなことを叫んだけれど、「結果が出てからそんなことを言うのは無効だよ」とさらりと返されてしまった。
「っ」
離れていく背中に、私はそれ以上何も言えずに、見送ることしかできなかった。
「……ごめん、速水くん……」
私じゃ、説得できなかったよ……。
見つめた背中がやがて角を曲がって見えなくなって、私は思わずそう呟いていた。