好きになっちゃダメなのに。
そうして始まった引き継ぎ。
もしかして、という思いを捨てずに須谷くんの登場を期待してみたけれど、やはりその姿はないまま時間は過ぎていく。
集まった生徒の中に須谷くんの姿を探してみたけど、ズラリと並んだ生徒の中にさえ、私には須谷くんを見つけることはできなかった。
やがて先輩たちの挨拶が始まって。
さすがと言うか、ひとりひとりの挨拶に個性があって、最後だというのに思わずクスリと笑ってしまうものもあればほろりと涙が出てしまいそうになる挨拶まで、色々。
志賀先輩の挨拶も、志賀先輩らしい、とても爽やかで潔い、「今までありがとう」の一言だけだった。
だけどその一言に込められたたくさんの感情が見えたような気がして、心がぎゅっと締め付けられる。
そしてトリを飾った生徒会長のあいさつに、最後はやっぱり、寂しい気持ちにさせられた。
「ここからは、新しい生徒会メンバーに代わりたいと思います。今まで支えてくれて本当にありがとうございました」
生徒会長の声で、ステージに並んだ先輩たちが「ありがとうございました」と一斉に頭をさげる。
最後まで堂々とした姿に、心がジンと温かくなるのを感じて、次は自分の出番だということも忘れ、他の生徒と一緒にてのひらが痛くなるまで拍手を送った。