好きになっちゃダメなのに。
「……行こう」
ステージ脇に控えていたメンバーに視線を向けて、速水くんがそう言った。
拍手が鳴りやむ頃、先輩たちと入れ替わるように私たち新生徒会執行部は壇上にあがる。
────ここに立つのは、選挙のとき以来。
あのときは、まさかこんな形で再びここに立つことになるなんて、想像もしていなかった。
「生徒会副会長になりました、晴山明李です」
やがて挨拶の順番が回ってきて。
……ドキドキと心臓が緊張のせいで大きな音を立てていたけれど、声は思ったよりしっかりしていたからよかった。
「私が生徒会の一員になるなんて、……おそらく皆さんも意外に思っていると思いますが、実のところ、私が一番驚いていると思います」
私がそう言うと、何人かが笑ってくれ、空気がなごんだのがわかって、心の中でホッと息を吐く。
「速水くんの選挙のお手伝いをさせてもらったとき、私は全然役に立てなくて、頼りなくて、他の立候補者や推薦人のみんながとてもしっかりしていることが、とても不安で。
私にとって生徒会は、私とは比べ物にならないくらい立派な人がいるべき場所……、とても、遠い場所でした」