好きになっちゃダメなのに。

……そして次はいよいよ、速水くんの挨拶。

顔を上げマイクを手渡すときにまっすぐ合った瞳はとてもきれいで、少しの迷いもない、強い決意に満ちているように見えた。



「生徒会長になりました、速水です。

まずは、今日まで引っ張ってきてくれた生徒会の先輩方。本当にありがとうございました」


速水くんがそう言って、ステージ脇にいる先輩たちに、頭を下げた。

先輩たちが少し恥ずかしそうに笑って速水くんをあたたかく見ているのがちらりと見えて、私まで優しい気持ちになる。


……それにしても、やっぱり。

速水くんが話すと、空気が変わる。

引き締まる。



「そして、生徒会長に選んで下さったみなさん、ありがとうございます。期待に添えるよう、精進します。ここにいる新しい生徒会も、今までの生徒会に負けないように頑張っていきますので、よろしくお願いします。

……本当は、もうひとり新しいメンバーがいるんですが」


淡々とした挨拶の途中、急にそんなことを言った速水くんに、ステージに立つメンバーも、ステージ脇にいる先輩たちも、思わず「えっ!?」という顔をした。

もちろん私もその中のひとり。

だって。

だって、もうひとり、って。

説得失敗した、須谷くんのことだよね!?


「まだ説得できていませんが、絶対に仲間にしますので、生徒会メンバー、気付いたら一人増えてると思います。そのときは皆さん、温かく迎えてあげてください」


冗談のようにそう言ってから、速水くんは表情を引き締めた。

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