好きになっちゃダメなのに。
──ダンッ、という、床を蹴ったような大きな音が響いたから。
びっくりして音がした方を見れば、ステージに上がる階段を大きな足音を鳴らして登ってくる……、須谷くんの姿があって。
「えっ、須谷くん!?」
驚くメンバーの前を通りすぎて須谷くんがまっすぐに向かったのは、速水くんのところ。
ここまで来るともう、驚いたのはメンバーだけではない。
ステージの下の生徒もみんな驚いて、ざわめきが生まれる。
「……」
速水くんのところに辿り着いた須谷くんは、しかし何も言わなかった。
全校生徒が見守る中、しばしの沈黙ののち、先に口を開いたのは速水くんのほう。
「まったく。恥ずかしがってるのかもったいぶってるのか知らないけど、登場目立ちすぎ」
マイクにばっちり拾われた速水くんの淡々としたセリフが、体育館に響く。
速水くんの言葉を聞いても、須谷くんはしばらく何も言わずにいたけれど、やがて速水くんの手からするりとマイクを抜き取った。
そして、全校生徒の方に視線を向ける。
「生徒会長がどうしても言うので、引き受けることにしました。
……生徒会副会長の、須谷です」