好きになっちゃダメなのに。

シン、と静まってステージ上のやりとりを見ていた周囲は、良く通る須谷くんの言葉が体育館に響いても、すぐには事態をのみこめなくて。

よろしくお願いします、という須谷くんの言葉にも、拍手をしなきゃいけない場面だと分かっているのに、すぐには反応できなかった。


「……ということで、これで全ての新生徒会執行部が揃いました。過ごしやすい学校を目指して頑張りますので、よろしくお願いします」


須谷くんからマイクを奪い返した速水くんがそうまとめると、深く礼をした。

つづいて隣にいた須谷くんもそれに倣い、その様子にステージ上の生徒会メンバーもハッとして頭を下げる。

やがてパチパチと拍手が聞こえてきて、その音はぶわっと大きく膨れ上がり、私たちを温かく迎えてくれる。




頭を上げてから隣にいる須谷くんのほうを見ると、ぱちっと目が合う。

ふっ、と苦笑した須谷くんの表情は今までの整った笑顔よりずっと、須谷くんの素の部分を表しているような気がした。



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