好きになっちゃダメなのに。
少しためらうように私を見ると、「……引かないでほしいんだけどさ」と唐突にそんなことを言ってくるから、私は訳がわからないまま、「引かないよ」と答える。
すると速水くんは、私が答えてからも少し悩んで、やがて意を決したのか、鞄から何かを取り出した。
そしてそれを私の手のひらの上に乗せる。
状況がわからないまま、私は渡されたものに視線を落とした。
────ふわりとした手触り。
薄いブルーは、晴れた空のようで、私の大好きな色。
「えっ!?……これ」
速水くんと一緒に、志賀先輩の誕生日プレゼントを選びに行ったときの、リボンの髪飾り。
すごく好みだったから欲しかったけど、正直値段もそこそこしたし、バナナクリップを上手くつかいこなせた試しがないから諦めたんだ。
「……似合うと思って。あのとき、思わず買ってた」
私の目をまっすぐには見ずに少しずれた場所を見ているのは、照れているから?
「ただの元クラスメイトにこういう物をあげるのは変だって気付いたのは、買った後で……、だけど、今ならいいかと思って」