好きになっちゃダメなのに。
ハッとして、慌てて笑う。
「な、なんでもないよ。……それ、素敵だと思うっ」
えへへと笑った私を少しの間疑わしそうに見ていた速水くんだけど、「そう?」と自分が手に取った小さめのポーチに視線を落とした。
「……じゃあ、これにするわ。買ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
レジに向かった速水くんの後ろ姿を見ながら、私は小さく息を吐いた。
はー、まさかこんなふうに速水くんとお話できるとは思わなかったよ。
いつもみたいに真正面から会話をしていたら、もしかしたら衝突することもあったのかもしれないよね。
話が不思議なくらい続いたのは、商品を選びながらだったからかなぁ。
私はぼんやりとそんなことを考えながら、商品ラックに残った、速水くんが買いに行ったポーチと色違いのものをなんとなしに手に取る。
見た目は紺色にワンポイントで金色の刺繍でリボンのマークが入っているシンプルなものだけど、裏地まで可愛らしいチェックの模様が入っていて、ポケットも多く使いやすそう。
いちばん初めに私が速水くんに薦めたのもポーチだったけど。
私が選んだ、桜色のふわふわ生地のそれとは全然違う。
速水くんが選んだような大人っぽいデザインは、普段の私なら手にとらないタイプのものだ。