好きになっちゃダメなのに。
「晴山。これ、次2-6だから」
「え」
「え、じゃないだろ」
「はーい……」
先生は「よろしくな」と言い残し、教室を出ていった。
私はため息をついて教卓のところまで歩いていくと、先生が持って行くように指示したものを手に取る。
ずっしりとした重みに、思わず腕に力を入れ直した。
先生がいつも授業に持ってくる、なかなか立派な世界地図。
次に世界史の授業がある教室までこれを運ぶのは、いつもは日直の仕事なのに。
はあ。
ついてない。
「明李、寝てたわけじゃないよね?」
私の後ろからひょっこり顔を出したのは、羽依ちゃん。
「私、結構明李のこと呼んだよ?なのになんで気付かないの?なんであんなにぼーっとできるの?」
「私も知りたいよ。なんでこんなにぼーっとできるんだろう」
首を傾げて聞き返せば、羽依ちゃんは困った顔をして笑った。