好きになっちゃダメなのに。

私には好きな人に告白する勇気もないし、そもそも告白したいと思えるほど人を好きになったこともない。

今日だって、もとはといえば私がもっと機転のきく性格なら、あんなことにはなってない。


速水くんのことをカッコ悪いなんて言う資格、私にあるはずないよ。


「カッコ悪いとは思わなくても、可哀想とは思ったわけだ。

……そっちのほうが、よっぽど残酷だと思わない?」


「っ」


志賀先輩より速水くんの方が、よっぽど言葉に容赦ないと思うの……!

なんて、言い返せないけど。

刺々(とげとげ)しい想いが頭と心に燻って、だけどそれはやっぱり言葉にはできない。

どうして、私ってこうなの。

大事なときに何も言えない。


たしかに、速水くんの言いたいことだって分かるよ。

ひどいことしてる、って自覚してる。


でも。

……言い方!

もっと何かこう、他にいい言い回しはなかったの?


残酷、なんて。

その言葉だって、私の心を結構な威力で傷つけてるって、速水くん、分かってる?


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