好きになっちゃダメなのに。
ぐっ、と思わず唇を強く噛んだ。
「だいたいさ、もっと気のきいた返しできなかったわけ?あれじゃあまるで、俺と晴山さんの関係がそういうことだって認めたみたいだろ」
私がまさに気にしていたことを、ストレートに口にする速水くん。
わかってるよ。
そんなこと、私がいちばん分かってる!
……って、そう言ってしまいたいけど。
「ごめんなさい……」
結局、私の口から零れ落ちたのは、いつものそのセリフ。
私の謝罪に、速水くんは何も返してはくれず、しばしの間シンとした重い沈黙がおりた。
「……私、帰ります」
先にそう言って沈黙を破ったのは、私の方。
ピリピリとした空気に耐えきれずに、逃げ出す方を選んだ。
速水くんが無意識に掴んだままにしていたであろう手。
その手をゆっくりと振りほどこうとしたけれど。