好きになっちゃダメなのに。
「あの」
ほどこうと力を入れた瞬間、私とは逆の意志が込められた、速水くんの手のひら。
私に横顔を向ける様な角度で立っていた速水くんの爪先が、私のほうに向くのを視界の端で捉えた。
戸惑いながらも繋がれた手から顔をあげると、眉間にしわを刻んで難しい顔をした速水くんが私のことを見下ろしていて。
どこか悩ましげなその表情は、とても、綺麗で。
咄嗟に何も言葉が出なかったのは、速水くんの私に向けられたまっすぐな瞳に、不覚にも魅了されてしまったから。
何でも見透かされてしまいそうな、強くてまっすぐな目。
いつも怖いと思うその目が、不思議と今はそう思わなくて。
「……晴山さんのそういうとこ、本当にイライラする」
再び胸にざっくりと刺さるその言葉を、真正面から受け止めてしまった。
「前も言ったけどさ。簡単に折れるな。簡単に謝るな。……あんただって少しは言いたいこと、あるだろ」