好きになっちゃダメなのに。

自分で自分を不思議に思っていると、ふいに高い位置から低い声が聞こえてきた。


「上から目線で、優しくない、ね」


言葉の後ろについてきた、ふーん、というわざとらしい相槌。


「な、なにっ!?やっぱり怒ってる?
で、でも言いたいこと言えって速水くんが言ったんだからね!」


自分でもあんまり自覚はなかったんだけど、私。

一度たがが外れると、なかなか戻せないみたい。


情けないことに、どもりながらではあるけど。

さっきまで謝ることしかできなかったのに、強気な言葉が飛び出してきて、自分でもびっくりだ。


「いや、怒ってないし」


ふ、と口角を微かに上げた速水くんの顔が、なんだか思った以上に近くにあって、思わず呼吸が一拍遅れる。



「あんた、いつもそれくらい言葉にすればいいのに、って思っただけ」



……どうやら本当に怒っていないらしい速水くんはそう言うと、ぎゅ、と私の手を握る手に力を込めた。


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