好きになっちゃダメなのに。
渡り廊下を過ぎたら、1つ下の階にくだらないといけない。
人混みを抜けてすぐのところに階段があって、私は自分の身長とほとんど同じくらいの長さがあるんじゃなかろうかと錯覚しそうな立派な世界地図を両手で抱え直して、ゆっくりと階段を下り始めた。
もう、やっぱり遠いよ、6組。
頑張って世界地図を届けて、急いで教室に戻って、道具を持って生物室までダッシュしなくちゃなんだよね?
うわぁ、間に合うかなぁ……。
はあ、と心の中でため息をついた、そんな瞬間だった。
ドンッ、という軽い衝撃。
急いでいたのだろう、階段を駆け上がってきた生徒が、私が持っていた世界地図にぶつかっていった。
あまり広い階段ではないから、すれ違う人と距離が近くなってしまうのは仕方ない。
普段の私なら、なんてことない衝撃だった。
……でも。
「きゃ……っ!」
小さくよろめいた身体を立てなおそうとした瞬間。
右足がしっかりと床をとらえることが出来ずに、ズルッ、と足の裏が階段の淵を滑った感覚。
ガクンと身体が右側に傾いた。
視界が、一瞬で下降する。
「きゃああっ!」