好きになっちゃダメなのに。
「ふふ」
速水くん、私が喜びそうなことが何かって、考えてくれたってことだよね。
それって、なんだか不思議なくらい、くすぐったくて、嬉しい。
思わず零れてしまった笑い声に、速水くんは不機嫌そうに私を見た。
「何笑ってんの?」
「だって。……ありがとう、速水くん。
私、学校の屋上って、一度上がってみたかったんだ」
笑顔でそう言う。
速水くんは冷たいだけの人だって、ずっとそう思っていて。
こんな優しいところもあるなんて、クラスメイトだったときには、全然気付かなかった。
「……あ、そ。気に入ったならよかったよ」
速水くんはそう言うと、屋上の端のほうまで歩いていって、カシャン、とフェンスに腕を乗せた。
私もそれに従うように隣に並ぶ。
沈み始めた太陽が茜色の光を溢れさせて、私たちを照らしていた。