好きになっちゃダメなのに。
「気に入ったなら晴山さんが買ったら?」
晴山さんが離したリボンを手にとって、そう訊いてみる。
けれど彼女は困ったように笑った。
「ううん、私、不器用だからそういうの上手くつけられないんだ。可愛いから思わず買っちゃったりするんだけど、全然使いこなせなくて」
「ふーん」
見たところ単純そうな作りだけど、と思ってそのリボンを眺めていると、ふと『バナナクリップの可愛い留め方』という文字が目に入った。
ヘアアクセサリーの棚に置いてあった、写真付きでヘアアレンジがいくつか紹介されているフリーペーパーだ。
「見たところ、単純な作りしてるけど」
フリーペーパーに載っているヘアアレンジ方法も、簡単そうに見える。
「私もそう思って買ってみたんだよ。でも上手くまとまらないんだもん、私がやると。ていうかヘアアレンジ全般苦手なの」
不満そうな晴山さんのセリフ。
なるほど、それで彼女はいつも髪を下ろしているのか。
……でも、もったいないな。
ポニーテールとか、似合いそうなのに。
もうすでに別のヘアアクセサリーの品定めを始めた晴山さんを眺めながら、ぼんやりとそう思った。
不器用なのは仕方ない。
でも、はじめから諦めないで、練習すればきっと──。
「……えっ?ちょ、ちょっと、速水くん?」