恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「仕事」
「もっとつながれたらいいのに」
私の声と涼牙さんの声が重なった。
「何か言いました?」
「どっちが狡いんだかねって
いつも俺の本音を聞かないではぐらかす」
ふわり、私は涼牙さんにベッドに押し倒された。
「えっ・・・」
「このまま奪っちゃおうか」
昨日は気づかなかった涼牙さんの瞳
片方だけ緑なのだカラーコンタクトか何かかな。
「きれい」
頬を滑る指でもそれだけだった。
「時間ぎれ」
「えっ・・・」
「八時だよ」
「シャワー借ります」
「ご自由に」
涼牙さんはごろりと猫のように転がってしまった。
まだドキドキしてる中、シャワーを浴びて支度をした。
「おじゃましました」
「送ってく」
どういう風の吹き回しなんだろう
あのめんどくさがりな涼牙さんが送るだなんて。
「あっいえ大丈夫です」
真紀にばれたらなに言われるかわからない。
「ならいいけど」
涼牙さんの良いところはこだわらないところでもそれが人を遠ざけてるんだよね
「本当に大丈夫なので」
私はマンションを出て急いでバスに乗り会社に向かった。
会社のエントランスをくぐるなり真紀にみつかる。
「おはよ昨日電話したのにぜんぜんでないんだもん」
「おはよごめんね」
「まさかあのお店気に入ったとか?」
「んん」
「ならいいけど今日は金曜日、駅前の居酒屋が安い日だよ行かない?」
「うんたまにはいいね」
私は鞄から社員証を取りだそうとして気づく。
「どうしたの?」
「社員証、忘れたみたい
先に行ってて」
「まったくドジなんだから
もうすぐ仕事はじめだから急ぎなよ」
「うん本当にごめんね」
きっと涼牙さんのマンションに違いない。
急がなきゃと外に出るとクラクションの音がした。
車に近づくと運転席側のウィンドウがさがりサングラスをかけた涼牙さんと目があう。
まるでどっかの芸能人のようだ。
「あの」
受け取れと言わんばかりに社員証を差し出された。
「店にあった」
まさか取りに行ってくれたの?
「ありがとうございます」
「呼び出しくらったから店に行っただけ」
「ありがとうございました」
車がはしりさってもまだ余韻に浸っていた。
私はオフィスに戻りコーヒーを手にしてデスクに座った。
「アスカ彼氏いたんじゃん」
真紀がこれみよがしに言う。
「違う違う友達かな」
「ふ~ん友達ね」
「ってどこで見てたのよ」
「広報部の子が偶然通りかかったら見つけたらしいよ」
「もう」
「嬉しいくせに」
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