恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
私は気持ちを悟られまいと急いで仕事にとりかかる。
30にして仕事が恋人なんて笑われちゃうよね。
ため息をひとつするたびに正面の真紀が怪訝な顔をする。
書類を作成して上司に提出しに行ったはいいが怒られてしまった。
「ミスばかりじゃないか
こんなんじゃ来週のプレゼンに間に合わない。
今日は残業確定だな
気持ちがはいってないんだよ仕事に」
確かに私、惚けすぎのような気がする。
デスクに戻って落胆していると真紀が声をかけてきた。
「大丈夫?」
「平気」
お昼になってランチのために外に出ようかを考えたが仕事が気になり断った。
携帯が鳴っていたのにも気づかずに仕事をしていて気づいたのは何回めかのコールの後だ。
「もしもし」
「もしもし」
「店長さん?!」
「今日も来てよお給料も渡したいからさ」
「でも私あんなひどいことしたしミスばかりだし」
「君がいないとうちのエース2人の機嫌が悪いから」
「あっでも来週までにやらなきゃいけない仕事があるので」
「それじゃあ仕方ないけどあまり根をつめすぎたらダメだよ」
「はい」
「あっちょっと待って」
しばらく待つと電話越しに罵声がとんできた。
「マヌケ」
「開口一番にマヌケってなんですか隼斗さん」
「俺さまを待たせたら高くつくからな?」
「なるべく善処しますから」
「おまえはなーんもできないマヌケだ
せいぜい俺様に顎で使われてるぐらいがちょうどいいんだよ
勘違いすんなよ使ってもらえるだけ有り難いんだからな
あいつとは一緒にすんないいな?」
「はいはい」
隼斗さんの俺様的性格キライじゃないけどやっぱり何か違う。
「2人にだけしか興味あらへんの?残念やなぁ
俺ならもっと高みに連れてってあげれんのに」
美弥さんの声がした。
その後ろで真さんが喋る。
「真です
まぁ倒れない程度に頑張りなよ
帰ってきたら美味しいもの作ってあげるから」
真さん優しすぎる
私はなんだか元気が出てきて携帯を置いた。
「お昼にしようかな」
時計をみれば12時30、あと30分しかない。
私はお財布片手に立ちあがった。
外に出てみれば秋風が心地よくふいていた。
けど優雅にランチなんてしてられない。
コンビニでサンドイッチと栄養ドリンクを買って会社に戻る。
サンドイッチ片手に作業を進めていくうちに没頭してしまい真紀に名前を呼ばれてることにも気づかなかった。
「アスカ、ねぇアスカってば」
「ごめんなに?」
「なにじゃないわよ」
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