恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
ちらりと真紀の方を見る。
「携帯なってるよ」
「えっ・・・知らない番号だ」
「彼氏さんじゃない?
出てみたら?」
「んうん」
気乗りしなかったけどとりあえずででみると眠そうな声がした。
「待ってるから」
「えっ・・・」
「何度も言わないからな」
「涼牙さん」
ガタンと音をたてて立ちあがってしまい赤面する。
「あっ・・・なんでもないです」
笑ってごまかして座り直し改めて言う
「その代わり仕事頑張れよ」
「はい」
携帯を置くと真紀が笑って言う。
「ラブラブだねぇ
じゃあ私はお払い箱だねぇ今日は楽しんできなさいよ」
「ごめんね」
「否定しないんだ」
「あっ・・・」
やっぱり5時になっても仕事は片づかずいつの間にか暗くなっていてすべて終わり時計を確認すると21時になっていた。
これ以上、待たせたら悪いかなと思って急いで支度をして外に出た。
すると一台の車が私の前で停まった。
「ごめんなさい」
「あんたってやっぱ面白い」
「うっ・・・」
車に乗り込むとジャズとは違う曲が流れていた。
涼牙さんはただただ無言で運転しているがやがてコインパーキングで停まった。
「はい?」
「いいから降りろ」
いつになく鋭い声で言われ私は車を降りて後を追う。
細い路地の先に普通なら見落としてしまいそうなラーメン屋があった。
涼牙さんは暖簾を普通にくぐりカウンターに座る。
注文しなくてもおじさんはわかってるようですぐに作業にとりかかっていた。
「珍しいこともあるもんだ
あんたはなににする?」
おじさんにきかれて私は迷ったけれど涼牙さんと同じものにした。
「あの・・・」
「おまえさなんでそんなにビクビクしてるわけ?」
「えっ・・・」
「人の顔色うかがってあわせて疲れない?」
「涼牙さんの言葉って刺さります
でも間違ってないからなにも言えないです」
「そんなに人のために生きてなにが楽しいわけ」
「難しいですけど嫌われたくないからですかね」
「嫌われたくないから人にへこへこ頭さげるんだ」
「それを言うために待ってたんですか?」
「ただ訊きたかっただけ」
それだけ言うと運ばれてきたラーメンをすすりはじめた。
ラーメンはいたってシンプルでそれがまた美味しい。
ラーメンを食べ終わって車まで戻る道中、涼牙さんが足をとめた。
「どうしたんですか?」
「おまえは質問ばかりだな」
振り返った涼牙さんは私の手をひいて歩きだした。
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