恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「痛いですよ」
とは言ったものの特になにもなく車まで戻った。
車まで戻ったのはいいけど気まずい空気が流れる。
「あの・・・」
私は声をかけようとしてやめた。
あまりにも無意味なような気がしたから
涼牙さんは私の手首を放すことなく私を車のドアにもたれかけさせて言う。
「言葉なんて無意味なんだよ
俺のこと少しでも追いかけたいならちゃんと態度で示して」
涼牙さんの目は本気だった。
私は背伸びをして涼牙さんの頬にキスをした。
子供っぽいって笑われるのを覚悟したキス。
「今はこれが精一杯なんです」
赤面した顔をあげると涼牙さんはキスで返してきた。
「バカみたいなキス
キライじゃない」
車に乗りお店に向かう。
気まずい空気を打破するために私はわざと明るく話す。
「私、本当にドジでこの間なんて大切な書類をシュレーダーにかけそうになっちゃったんですよ」
涼牙さんにそういう話しは不向きだとはわかっていたけど何か話さなくちゃで頭がいっぱいだった。
「だから?」
「あっいえなんでもないです」
その後は沈黙だけが流れ車に揺られながらお店に向かった。
お店についてドアを開けると隼斗さんが仁王立ちで待ちかまえていた。
「遅い」
「色々あったんです」
隼斗さんは少し遅れてきた涼牙さんを睨みつけ軽く舌打ちをした。
そして私の手をひきズルズルと自分のテーブルに案内した。
「なんですかいきなり」
「水割り」
「来て早々、飲み物作れって」
私は渋々、飲み物を作ってテーブルに置いた。
「私、美弥さんのところに挨拶してきますね」
「ここにいろ」
「だって・・・」
隼斗さんはいきなり私の腰を引き寄せ唇を重ねてきた。
「ご主人さまの命令だ」
そこにずかずかと歩いてきたのは涼牙さんだ。
テーブルにだんとボトルを置く。
「見損なった」
「えっ・・・今のは違うんです」
慌てて訂正するがやはり遅かった。
それどころか隼斗さんは更に頬にキスしてきた。
「勝手にやってろ」
涼牙さんは吐き捨てるように言ってバーカウンターのほうにいってしまった。
「隼斗さんなんなんですかもう」
「深い意味なんてねぇよ」
隼斗さんはもうすでにお客様と話していた。
私の横にいたお客様が言う。
「隼斗は子供っぽいから誰にでもちやほやしてほしいの
それにみんなに優しいから軽く見られちゃうのよねぇ」
まるで人のおもちゃを欲しがる子供みたいに無邪気なのだという。
私は涼牙さんのところに行った。
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