恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「おはよう」
そこに涼牙さんはいない代わりに真さんがいた。
「おはようございます」
「元気ないね」
「まぁ」
「隼斗もさ悪い奴じゃないと思うよ
ただ寂しいんだよ
隼斗は親に捨てられたから
居場所を求めてるんだよ」
隼斗さんはそんな素振りなんかみせずに明るくふるまっている。
「そうだったんですね」
「木戸さんにくってかかるのもないものねだりの裏返しなんだよ」
真さんは言いながらウーロン茶をさしだしてくれた。
「ありがとうございます」
「お腹すいてない?」
「食べて来ましたから」
「ならいいけど
美味しいものでも食べたら元気でるかなって思っただけだから」
「本当に優しいんですね」
真さんといるとほっこりとした気分になる。
「俺の優しさなんてたいしたことないよ」
「そんなことないですよ
涼牙さんは?」
「木戸さんならあそこ」
顎をしゃくった先にはテーブル席で1人のお客様と接している涼牙さんだった。
「珍しいですね」
「あの人は木戸さんの常連さん
確か名前は雪菜さんだよ
まぁ雪菜さんが一方的に話してるだけだけど」
見れば確かに甘い言葉で言い寄っているのは雪菜さんのほうだ。
「そうですね」
「真くんちょっと」
厨房の方から店長が呼ぶ。
「ごめんね普段は俺、料理担当だから
忙しいとここにいるんだけどね」
「仕事の邪魔してすいません」
「また後でね」
「アスカちゃんもきて」
何があったんだろう
店長に呼ばれていくと小さめのおにぎりが銀のトレイにラップをしいた物の上にたくさん並べられていた。
「可愛い」
「でしょ?一口おにぎりだよ
アスカちゃん配ってきてよ」
「はい」
私はウキウキした気分でお客様のテーブルを回った。
最初に行ったのはやはり美弥さんのところ。
「おおきにほんまうまそうやな」
「でしょ?小さくて可愛いですよねぇ」
「あなたお手伝いさん?可愛いわね」
美弥さんのお客様はいい人が多くて流石、人徳と感心してしまう。
「あっいえ」
「アスカは可愛いいしええ子やもんな」
「そんなことないです」
えへへと笑いながらおにぎりを配り終え次にどちらに行こうか迷ったが先に隼斗さんのところに行った。
「さっきはどーも
食べ物の差し入れです」
「ちょっと隼斗になんて口きくのよ」
やっぱり隼斗さんのお客様はガードが固い。
「隼斗さんおにぎりです」
「そこに適当に置いてけよ」
隼斗さんはぶっきらぼうにそういうので私もお皿に適当にいれた。
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