恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
ケーキ、ケーキと浮かれていると店長が言う。
「1人で平気?」
「はい、だって近いし」
「女の子ひとりは心配だよ」
「大丈夫です」
私は笑顔でそういうとお店を出て歩きはじめた。
お店から大通りに出た道沿いに目当てのケーキ屋があった。
私は指定されたケーキを買い急いで戻ろうとして気づく。
足音がする、こんな細路地で?
私は少し足を早めたが誰かにあたって尻餅をついた。
「痛っあ」
私を強引に引きずり立たせる。
「子羊ちゃんみっけ」
「放してください」
「楽しんでからね」
私がぎゅっと目を瞑ると相手はキスを迫ってきた。
もう少しというところで相手が変な声をあげたので目を開けるとその人は道の片隅にうずくまっていた。
「ありがとうございます」
「なに謝ってんだ?
危機管理なってねぇな」
息もできなくなりそうな甘い口づけ・・・。
「涼牙さん?」
暗いのでよくわからないけどこんなキスの仕方をするのは涼牙さんしかいない。
「なんだよ名前呼ぶ暇あるなら歩け」
「先に行っててください、足捻ったみたいです」
「ったくどんくさい」
涼牙さんはそうは言ったもののその場にしゃがんでくれて私をおぶってくれた。
「ごめんなさい」
「別に」
私はまだお店につかないでほしいとは思ったがしばらくして着いてしまった。
涼牙さんは私を降ろすと今度はお姫さま抱っこをした。
「なんだよ」
「恥ずかしいのでおろしてください」
涼牙さんは素直に私を降ろした。
「まだなにか言いたいのか?」
「涼牙さんのお客様にアヒルって言われたんですよ責任とってくださいね」
「さっきのでチャラだ」
涼牙さんは私からケーキの箱を受け取ると軽く笑って言う。
「食い意地だけははってんのな」
「ひどいですいくらケーキが無事だからって」
追いかけようとしてバランスを崩した私を受けとめたのは隼斗さんだった。
「あっえっごめんなさい」
「怪我してたのか?」
「大丈夫です」
なんで涼牙さんはスタスタと行ってしまうんだろう。
隼斗さんに手を引かれお店の中に入り店長さんに治療してもらった。
「腫れてるね明日、病院に行ってきなよ」
「はい」
「でも無事でよかった」
救急箱を棚の上に戻し店長さんは言う。
「私、本当ダメダメですね」
「そんなことないよ
少し休んだら降りといでよ
ケーキ切るからさ」
「はい」
私は事務所で少し休むことにした。
いつの間にか眠ってしまったらしい。
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