恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
誰かに頬を引っ張られ慌てて抗議する。
「いふぁいです」
「いい加減起きたらどうだ?」
「本当によく寝てる」
夢?涼牙さんと隼斗さんがいがみあいもせず目の前にいるなんて。
「ほらよマヌケ、俺様が持ってきたんだからぜんぶ食え」
差し出されたのはケーキのお皿。
もちろん涼牙さんも差し出してくれている。
「ぜんぶ食うよな?」
「はい、いただきます」
でもこんなに食べたら太るかな。
タヌキやらアヒルやらカラスやら呼ばれ今度はブタかと考えていると隼斗さんが跪いてケーキをのせたフォークを差し出してくる。
「あーん、ほら美味しいよ?」
うわっ・・・本当に王子様みたい。
涼牙さんもたどたどしく立ったままフォークを差し出してくれる。
どちらにしようかと悩んでいるとやはり2人は揉めだしてそれがおかしくて笑った。
「両方ちゃんと食べますから、ねっ?」
「なら俺のから食べろ」
涼牙さんのケーキを食べ隼斗さんのケーキも食べた。
すごく甘くて美味しい。
「クリームついてるよ?」
隼斗さんが私の指をペロリと舐める。
「ったくおまえは」
はい?涼牙さんは私の唇にキスをした。
「ちょっ・・・」
「ただ味見をしたかっただけだ」
隼斗さんがちらりと私を見る。
私、食べられちゃう?
隼斗さんは優しく頬にキスをした。
「あいつの後にキスするなんてまっぴらごめんだ」
「ぷっ・・・あはは」
とつぜん笑いだした私に2人が唖然とする。
「だって2人とも子供みたいなんだもん」
「悪かったなガキで」
2人揃って同じこと言うなんて本当に仲が悪いとは思えない。
涼牙さんはそっぽを向いてタバコを吸いだした。
「足は大丈夫?」
「はい、だいぶ痛くなくなってきました」
そこに店長がノックをして入ってきた。
「2人とも休憩終わりにしてお店閉めるから掃除するよ」
「もうそんな時間ですか?」
「いま4時だね」
「私も手伝います」
「大丈夫だよ
問題児が2人いれば」
涼牙さんはタバコを消すといかにも嫌そうな顔で事務所を出て行った。
隼斗さんもめんどくさそうだった。
私はしばらくしてから下に降りた。
朝陽が差し込んでくるなかみんなはお客様用の席で眠っていた。
まだ片付いてないとこが大半でなんとか寝るスペースを確保したにすぎない。
「そろそろ帰る?」
厨房の方から声がして店長が顔を出した。
「いえ今日は土曜日なのでお休みです
私も食器洗い手伝います」
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