恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「大丈夫大丈夫それより涼牙の方手伝ってやって」
涼牙さんまだ起きてるんだ。
私はバーカウンターの方に移動すると真さんが眠っていた。
涼牙さんは灰皿にタバコを置きながらグラスを拭きあげていた。
「お疲れ様です
まだ起きてたんですね」
「まあな」
私もグラスを手にとって拭いていく。
「涼牙さんって意外に真面目なんですね」
「意外っておまえなぁ
嫌みを言いに来たなら帰れ」
「嫌みだなんてひどい」
よく見れば涼牙さんはメガネをかけていた。
いつものカラコンはいれてないようだ。
「グラス頼んでいいか?」
「あっはい」
タバコを吸いつつも涼牙さんはお酒の残量や本数を書きあげていく。
手を止め私の吹きあげたグラスを見て言う。
「汚れてる」
「えっ・・・すみません」
涼牙さん曰わくグラスに水跡がついていてはいけないらしい
ただ拭けばいいというわけではないようだ。
「なんだよ?文句なら聞かないからな」
「違います、なんでメガネなのかなって」
「別に」
「そうですよね」
涼牙さんはタバコの煙りを吐き出すと火を消してメガネを外した。
「あっ別に似合わないとかじゃないんです
ペルシャ猫みたいな涼牙さんも素敵だなって」
「ペルシャ猫?」
「あっいえ深い意味はなくてペルシャ猫って目が左右色違いじゃないですかだからその・・・」
「アヒルに言われても嬉しくない」
「アヒルってなんですかアヒルって」
「ぎゃあぎゃあうるさくて小さな羽根でバタバタしてる鳥」
「アヒルの説明はどうでもいいんです
とにかく私は」
もう聞きたくないとばかりに涼牙さんは言う。
「トイレ行ってくる
あとちゃんと拭いとけよ」
「あぁはい」
「返事は『はい』だ」
「はい」
まるで学校の先生みたいな口調で言われ私はがっくりしつつも言われた通りグラスを拭く。
しばらくして涼牙さんが戻ってきた。
その手には洗いあがったばかりのお皿やグラスのカゴがあった。
「終わったか?」
「はい
これもですか?」
「イヤならいい」
「聞いただけですって・・・」
「似合わないならはずす」
いつの間にか涼牙さんは片目だけにカラコンをいれていた。
「だから似合わないなんて言ってません」
それからは黙々と作業をこなしていった。
「やっと終わりましたね」
「そうだな」
調理場も綺麗に片付いている。
「2人ともお疲れ様」
店長がコーヒーを淹れてくれたのでいただくことにした。
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