恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
あらかた片付く頃にはいつもの出社時間になっていた。
みんなと別れてアパートに帰る。
やっぱり落ちつく。
帰り際に教えてもらった涼牙さんの連絡先から連絡がこないかと待ってる間に部屋を掃除してしまう。
キッチンに立ち久しぶりに掃除しているとお気に入りのマグカップが割れてしまった。
不思議に思いながらもシャワーを浴びに行き戻ってみると見知らぬ番号から着信がきていた。
それは病院からで私は携帯を取り落としそうになった。
「木戸さんのことでお電話しました」
木戸さんって涼牙さんだよねどうしたんだろう。
話しを聞けばマンションの駐車場で倒れてたところを通行人の人が病院に電話をしたらしい。
急いで着替えてアパートを出てタクシーをつかまえて病院に向かった。
病院に着くと急いでエントランスをくぐって受け付けで訊いた。
「木戸さんの病室は?」
足の痛みも忘れ私は訊いた。
病室に行くと機械的な音がしてベッドの上には涼牙さんがいた。
酸素マスクまでしてさっきまで話していたのとは別人のようだ。
「失礼します」
後ろから声がして医師が顔をだした。
「はい」
「薬はちゃんと飲んでましたか?」
「えっ・・・」
涼牙さんのことだ、ぜったいに飲んでないに決まっている。
「これだけ容態が悪化してしまうともう薬ではどうにもならないかもしれません
もしもの時のことも頭にいれてくださいね」
私は言葉を探すのに苦心していた。
涼牙さんがいなくなる?
いまここにちゃんといるのに?
有り得ない・・・
医師がいなくなって私は椅子に崩れた。
泪が自然に溢れてくる。
「なに泣いてんだよ」
涼牙さんの優しい声・・・
「泣いてません」
「なんで来たんだ?」
「涼牙さんが呼んだんですよ?」
「もう帰れ
これ以上いたら辛くなるおまえが」
「ならないです」
「泣いてる時点でおまえの負けだ」
「泣いてません
私が泣くのは大切な人を亡くしたときです。
だからこの涙は泪じゃないんです」
「屁理屈」
「私はあまのじゃくですから」
「勝手にしろ」
「勝手にします
でも涼牙さんは勝手にしちゃダメですよ?
病気になんか負けちゃダメです
じゃないと私、涼牙さんのこと笑っちゃいますからね」
涼牙さんはふっと笑って目を閉じた。
「涼牙さん」
寝ているだけとわかっていてもやっぱり心配になる。
心拍計が規則的に動いてる限り平気だっていうのはわかるけど・・・
「なぁ願い事ひとつだけ叶えてやるよ」
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