恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「帰りはどうするんだ?」
「普通に帰りますよ
って邪魔ですか?」
「タクシーか?」
「はい」
涼牙さんは本を置いてサイドテーブルに置いてある財布から一枚抜いて私に渡した。
「いただけませんよ」
「それじゃあ不服か?」
「涼牙さんって金銭感覚までずれてますよね・・・一万円なんて受け取れません
お金ならありますから」
「おまえはどうなんだ?
隼斗と俺どっちに守られたいんだ」
返そうと思っていたお金を返せずにあぐねていると涼牙さんは突拍子もない質問をぶつけてきた。
「あっ・・・えっ」
「じゃああの言葉はウソだったんだな」
とっさに口に出た大好き
私はまだ揺れていた
ちゃんと答えがでないまま
「あっえっと・・・これ返します」
「ごまかすなよ?」
涼牙さんに真正面から見つめられ私は言葉をなくした。
抱きしめられてなにも言えずにいると耳元で
「ウソつき」
甘く低く囁かれた。
頬を赤らめて対応に困っていると涼牙さんが軽く笑った。
「ちょっとからかいすぎたか?」
「ふざけないでくださいよもう」
「でもキライじゃない、だろ?」
揺れる心で私は涼牙さんを見れなかった。
「今はまだ答えれません」
「おまえって本当にバカだな」
「はい?バカってなんですかバカって」
「大人しく俺にいや俺だけをみてればいいのに」
再び頬が赤くなり私は慌てて頭をさげた。
「そろそろ帰ります
姉とランチの約束があるんです
お金返します」
「なんで?」
「必要ないからです」
「俺が?冷たいな」
「違いますよ」
私がどうしようかと悩んでいると財布を投げつけられた。
「抜くなり戻すなり好きにしろ」
涼牙さんにその気はなく本を読み始めてしまっている。
私は渋々お財布を開けてびっくりした。
お金かなりはいってる・・・
私はそっと戻してお財布を返した。
「ふーんそれで納得した」
「納得って」
「別に」
私は歯切れが悪いまま病室を後にして姉の待つイタリアンのお店に行った。
今日は気持ちのいい快晴なのでテラス席で食べることにした
姉はドライトマトのピザを私は三種のチーズのカルボナーラと特盛りサラダを注文して飲み物のアイスカフェラテを飲んだ。
「実はねアスカ
私がこっちに来たのはただ来た訳じゃないんだ」
なんとなく感ずいてはいたが改めて言われるとけっこうな重みがくる。
「仕事うまくいってないの?」
「やっぱりわかっちゃった?」
「そりゃあわかるよ」
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