恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「結婚もうまくいかない仕事もダメ
そ~んな私だからさ妹のかわいい顔でも見て癒されようかなって」
私はしばらく考えて姉に打ち明けた。
「今日、夜に一緒にこない?」
「アスカがお手伝いしてる店?」
「うん」
姉は少し悩んでいたがすぐに頷いた。
「いいよ
あっちょっと待って」
どうやら姉の携帯が鳴ったようだ。
席を外した姉が戻ってきたときにはすごく嬉しそうな顔をしていた。
「どうしたの?」
「決まったのこないだの仕事
もうダメだぁって思ってたんだけどパリのデザイナーに気に入られてパリに来てほしいって
こうしちゃいられないわ
私、帰るわね。
あっそうそう母が年末には帰ってこいって」
そういうなり姉は伝票片手に行ってしまった。
本当に姉はいつも唐突だまぁそこがいいんだけど。
気晴らしにショッピングにいこうかな秋物も欲しいし。
そのときタイミングよく着信がきた。
「いまどこ?」
「美弥さん?」
歯切れのいい美弥さんの関西弁はきいていて飽きない。
「いまランチが終わったとこです」
「ほなら買い出しつきあってや」
「あっはい」
私は急いで駅前に移動してロータリーで待っていると一台の真っ赤なフェラーリが滑り込んできた。
クラクションを鳴らしたということはまさか美弥さん?!
ウィンドウが下がり中から顔をだしたのは美弥さんだ。
「篠崎美弥やで待たせんかった?」
「今来たばかりです」
「ほなら乗って」
私は本来なら運転席があるほうから乗り込んだ。
「買い出しって」
「もちろん店のやで
こっちに安いスーパーがあるねん」
そういうと車は右に曲がり真っすぐ行くと小さなスーパーがあった。
フェラーリに似つかわしくない庶民的なスーパーその駐車場に車を停めて歩き出す。
美弥さんは買い物カゴを持ちながらメモを見る。
「買い出しってけっこうありますね」
「そやな
なぁほんまに涼牙でええの?」
「まだ悩んでます」
「裏を返せばチャンスありやな」
メモを見ながら商品をいれていく私に美弥さんは言ったが店内の雑踏に紛れて消えてしまった。
「なんか言いました?」
「気のせいやないかな」
最後に珈琲豆を買ってレジに向かった。
レジも無事に済み買い物袋を美弥さんがすべて持ってくれた。
「少し手伝いますよ」
「気にせえへんのお姫様」
すっかり美弥さんのペースに巻かれ私は甘えてしまった。
そして車に乗り込むと美弥さんが抱きついてきた。
「みっ・・・美弥さん」
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