恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「涼牙のことなんて忘れさせたる
寂しい思いなんてさせへんから」
「とりあえずお店戻りましょう」
「冷たいなぁ」
私はなんとか美弥さんを引き剥がして携帯を見た
「涼牙さんから着信」
慌ててかけ直すしてみるが留守電になってしまった。
「涼牙ばかりやな
それって好きとはちゃうん?」
「わからないです」
「わかんないってなんやねん
うかうかしとったらとられてまうで」
確かに美弥さんの言うとおりかも知れない
でもまだ煮え切らない部分がある。
私は美弥さんの運転するフェラーリに乗りながらずっと考えていた。
お店についてドアを開けると隼斗さんが迎えてくれた。
「隼斗さん」
「ちょっとこっちこい」
私は手首を掴まれ二階の隼斗さんの使っている部屋に連れ込まれた。
「ちょっとなにするんですか」
「もう我慢できない
おまえが誰が好きでもかまわない
俺だけの物にしてやるよ」
「・・・」
私これでいいのかな
流されていく・・・断ればいいのにそれすらできずにただ流されていく・・・
隼斗さんの息づかい甘い香水の匂い
隼斗さんがいなくなってもベッドの上で壊れた人形のようにただ虚しく天井をみつめていた。
携帯が鳴ってやっと現実に引き戻される。
「もしもし」
「声、震えてるなんかあった?」
涼牙さんの優しい声・・・
私はまたウソを一つ重ねた。
「なにもないよ」
「今からこれるか?」
「ごめん行けない
もう行けないの」
「はっ?」
「だから大キライって言ってるでしょ」
「おまえ言ってることめちゃくちゃだぞ」
「なんでもない、もう切るねじゃあね」
「おいっ・・・」
私、最低だ
乱れた服を直してヨロヨロと一階に降りた。
有り得ない・・・
なんで・・・ここにいるのずるいよ・・・
「騙したつもりはなかった」
「涼牙さん・・・」
「まぁいいやとりあえず来い」
「行かない会わないもう顔もみたくない」
「あっそ、それでいいんだな」
涼牙さんは追いかけるタイプじゃないんだった・・・
いつの間にか来ていた店長が言う。
「店を辞めるから挨拶に来たんだって
わざわざ病院抜けだして
これからはゆっくり体を休めたいんだってさ」
涼牙さん辞めちゃうんだ。
じゃあもう本当にお別れ・・・
「じゃあな」
私は何も言えずただ普通に見送ってしまった。
私も体調がすぐれずボロアパートに帰った。
帰ってすぐ長めのお風呂に浸かる。
鏡には色々なところに花びらを散らされた私が写る。
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