恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
「おまえが嬉しそうな顔してたから」
「ありがとうございます」
「調子狂う」
涼牙さんはソファーの横にあるベッドに腰かけて言う。
「涼牙さんって苦手なんですかこういうの」
「めんどくさいだけ」
ぽつりぽつりと言葉にしていく涼牙さんが何故か可愛くみえてしまった。
「涼牙さんらしいですね」
「別に、俺は隼斗のように器用じゃないし体力があるわけでもない
美弥のように人なつっこいわけじゃないしな
苦手なんだよ本当にこういうの
めんどくさい」
「・・・元々、体弱いんですか?」
「黙れよ少し」
涼牙さんはベッドにごろりと転がって背をむけてしまった。
もう話したくないということだろうか。
「お邪魔してすいませんでした
戻りますねカクテルご馳走様でした」
私は部屋から出てお店に戻るとバーカウンターから手招きされた。
「あんた手あいてる?」
誰だろう?
「あっはい」
困ってる私に店長さんが話しかけてきた。
「真くん」
「えっ」
「涼牙のこと話したら無理して来てくれたの」
「あっえっ」
「店長からきいてる、うちの姫だって。
あんたすごいな木戸さんに気に入られるなんて、まっいいやこれ美弥によろしく」
私、気に入られてるのかなよくわかんない。
私は美弥さんのところに飲み物を運んだ。
「サンキュー」
「美弥さん」
「なんや?」
「隼斗さん怒ってますよね」
「気にしたら負けやで」
にっと笑って美弥さんはウーロン茶を追加した。
その後に隼斗さんに呼ばれて飲み物のメモを受け取った。
それから店長さんのところに行っておつまみを受け取った。
「楽しい?」
「はい」
「隼斗のこと気にしちゃダメだよ」
私は言葉につまりながら真さんに呼ばれたので向かった。
「あのさ木戸さん呼んでこれる?
あのテーブルのお婆さん木戸さんのカクテルが好きなの」
見ればお婆さんが1人でテーブルに座っていた。
「あっはい」
「あぁやっぱいいや
機嫌悪かった?」
私はこくりと頷いた。
「はいとても」
「ならいいや」
「でもお婆さん」
「大丈夫」
その意味が分からなかったがしばらくすると階段を降りてくる人影があった。
そのままバーカウンターに入った。
「おはようございます木戸さん」
何もいわずカクテルを作って私に手渡した。
「自分でいかないんですか?」
「肉親でもなんでもない」
さらりと言うとバーカウンターの中のスツールに腰かけてしまった。
私はカクテルをお婆さんに届けた。
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