恋して狼!~狼たちと籠の鳥~
私はとりあえず部屋を出てドアを閉めてその場で膝を抱えて座った。
「何やってんだよらしくない」
顔をあげれば隼斗さんだった。
「私、本当にお節介ですよね」
「まあな、んでウザがられて泣いてると」
「泣いてなんかいません
私、手伝ってきすね」
私はぐっとこらえて立ちあがった。
「ひとつ忠告、最初から傷つくってわかってんなら近づかなきゃいい」
本当にその通りだだけど・・・。
「そういう性格なんだからしかたないんです」
「しかたないね」
壁際に追いつめられおでこにキスされた。
「ちょっとなにするんですか」
私の怒りなど無視して強気に言う。
「いつかおまえに好きって言わせてやるよ」
私は立ち去る隼斗さんの背中に舌をだした。
「べーだっ、誰も好きになんかならないわよ」
私も慌てて下に向かう。
店長に呼び止められて急いで謝った。
「謝ってほしいなんて思ってないから
それより明日も仕事でしょ?
今日はもう帰っていいよ」
はいとは言ったものの時計は午前2時
終電はとうになくなっていてタクシーなど貧乏な私にはムリだ。
しかたなく事務所に戻ってタイムカードをきってエプロンを置いた。
ノックがして返事をすると涼牙さんが顔をだした。
「お疲れ様です」
なにもいわずタイムカードをきったということは帰るのだろうか
しばらくみつめていると声がした。
「なに?」
「あっいえどうやって帰ればいいかと模索中で」
大きなため息は飽きれともとれる。
「会ったばかりの人間になんでそこまでしなくちゃいけないんだよ」
「いいんですいいんです気にしないで」
「気にしなかったらどうするつもりだ?」
「このままここにいます」
「タヌキの置物みたいにか?」
タヌキって・・・さらりとひどいこという。
「うぅっ・・・タヌキって」
「じゃあ猫」
「招き猫ですねって違います」
「遊んでないで帰るなら帰るぞ」
意外に涼牙さんって面倒見いいよね。
なんて感心してる場合じゃなかった。
慌てて後を追っていくと夕方とは違う出口からだった。
そちらには駐車場もある。
どれもこれも名の知れた高級車だ。
その中にこじんまりとした黒の車が停まっていた。
確か名前はbBだったはず。
「これですか?」
「いやなら歩きだ」
「ただ確認しただけですよ」
助手席のドアを開けてくれたのでそのまま座席に座る。
横にいる涼牙さんは慣れた手つきでエンジンをかけた。
エンジンと共にジャズが流れてきた。
< 8 / 33 >

この作品をシェア

pagetop